■KNNエンパワーメントコラム
 孫正義が豆腐屋になった日 神田敏晶

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KNN神田です。

ついに孫正義が豆腐屋になった…。孫正義氏は、10年ほど前から「私は将来、豆腐屋になりたいと考えている…毎日、一丁(兆)二丁(兆)という商売をやっていきたい」と語っていた…ついにその時がやってきたのだ。ソフトバンクが、ボーダフォンを1兆7,500億円で買収し、連結売上2.5兆の総合通信事業者になるからだ。…といっても、英Vodafoneの所有するボーダフォンの日本事業会社の買収である。ボーダフォンの国内シェアは17%で、1,500万人のユーザーを抱える。「ラブ定額」「家族通話定額」「社員間通話定額」などの「通話定額サービス」を提供しているボーダフォンをソフトバンクグループが買収することにより、「全通話定額」のような夢のサービスが提供されてもおかしくない時代になりそうだ。実際に豪州などでは、ボーダフォン同士であれば、全通話定額などの契約数を増やすためのサービスを行なってきているので不可能な話ではない。さらに、全世界5億人のVodafoneユーザーに対しての関係性を築けることもソフトバンクのメリットでもある。英Vodafoneも米国投資会社に売却するというアイデアよりも、ソフトバンク、いやヤフーブランドに対して期待する部分も大きかったから今回の売却が成功したといえよう。ソフトバンクは、総務省から2005年11月に新規参入の免許を得たばかりであるが、2006年11月予定の「番号ポータビリティ(MNP:Mobile Number Portability)」による通信キャリア乗り換えチャンスに向けてのボーダフォンの可能性に賭けたところもあるだろう。つまり、時間をかけて自社の通信網や端末提供をかんがえるよりも、既存市場に参入できる「利」を考えたのだ。時間をカネで買ったわけだ。単純に契約数で買収金額で割ると、ユーザーひとりあたりの価値を11万6,666円で購入したこととなる。●トリプルプレイから、クワドルプル・プレイへソフトバンクが既存通信キャリアに参入することにより、トリプルプレイ=音声(電話)・ビデオ(放送)・データ通信という3つの通信機能をひとつの回線で提供するサービス形態から、クワドルプル・プレイ(quadruple=4つの)という4番目のサービスとして、FMC(Fixed Mobile Convergence:固定・移動融合)のサービスが加わることとなる。ソフトバンクの主なクワドルプルプレイ「音声」日本テレコム株式会社「ビデオ」ソフトバンク・ブロードメディア株式会社     TVバンク株式会社「データ通信」ソフトバンクBB株式会社「携帯電話」ボーダフォン株式会社これらにより、新旧の複雑な通信インタフェースをIP網へスムーズに統合する「マルチサービス・アクセス・プラットフォーム(MAP)プロバイダー」としての価値を持つこととなるだろう。これによって、何がこれから起きるのだろうか?思い出してみてほしい…。ソフトバンクがヤフーBBによる低額ADSL回線サービスを日本で行なっていなかったら、いまだに僕たちは、きっとISDN回線で夜間11時から朝8時までのテレホーダイによるインターネット接続を強いられていたのかもしれないからだ。また、一部では、高額な光ファイバー接続による寡占プロバイダーによって、不自由な思いをしてきたかもしれないのだ。電話が発明されてから1世紀以上経ているにもかかわらず、未だに月額固定料金ではなく、従量課金制度である。定額になったとしても24時間以上通話できる人間は存在しないだろうし、「音声通信」という通話間両者の時間を奪い合うメディアの需要は「データ通信」へますますシフトしつつある時代だ。ボーダフォンという地盤を利用して、番号ポータビリティ制度までにソフトバンクが何をやるかの目標は明確だ。NTT DoCoMoとKDDIからのシェア奪回だ。新機種や新サービス、ワンセグ放送などよりも、サービス価格のコストダウン化だ。現在で、一人当たり4,000円代の基本料金のみで毎月約600億円(年間約7,200億円)の収益があるのだ。シェアを2倍に展開するだけで、月額1,200億円、年間1兆4,400億円の収益が見込める。●「5分の1の法則」ボーダフォンの有利子負債(1.2兆円)が多くても、NTTグループのわずか5分の1である。また、今回の買収資金1兆7,500億円の調達はLBO(レバレッジ・バイアウト)という、自己資金をできる限り少なくし、買収企業の資産価値を担保に、テコの原理による金融機関からの借り入れを行なうことによって、ソフトバンク2,000億円、ヤフー1,200億円という、ソフトバンクグループ合計3,200億円という5分の1の調達資金でボーダフォンを手中に入れることができるのだ。英Vodafoneは有利子負債を一掃することができ、ソフトバンクグループおよびヤフーは、ユーロ圏で強くなかったヤフーブランドをテコ入れできるチャンスで、双方にとり有利な方向へ向かうことだろう。孫正義が豆腐屋ビジネスに参入したことにより、さらにスケールをアップできるかどうかは、今年のボーダフォンのシェア奪回にかかっているかといえよう。映像やデータサービス、ポータルとの連携などは当然であるが、消費者の財布の紐は固定をできるだけ安価に、わかりやすいサービス価格のラインナップを望む傾向にある。既存の通信キャリアの、何がいったいどうオトクなのかがわかりにくいサービスプランに、ぜひメスをいれてもらいたいものだ。

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